コンピューターとモデリングの進展は、粉体技術の分野にも影響を及ぼし、これまでの粉体シミュ レーションに対する観念に変化をもたらしつつある。粉体シミュレーションとして多用されている離散 要素法(DEM、Distinct Element Method)は、計算可能な粒子数に大きな制限があり、実現象の粒子 群の挙動をシミュレーションすることが困難であることや、境界条件(装置形状)が複雑であると設定 に多大なる時間を要するなどの課題を抱えていた。これらの問題に対して新しいモデリングや CAD (Computer-Aided Design)の導入、CFD(Computational Fluid Dynamics)とのカップリングにより、
より速やかに、より大規模に、より精緻に、より多くの現象に対して粉体挙動のシミュレーションが可 能になってきた。現在の粉体シミュレーションがどこまで利用できる技術として進展したのかを具体的 な適用例を示しながら紹介いただいた。
2017年5月に新たに設立された粉体シミュレーション利用技術分科会の代表幹事で㈱構造計画研究所
の角家強志氏には、「粉体シミュレーション利用技術分科会の活動紹介」と題して、分科会の活動方針、
コーディネータと幹事の紹介、近年の活動計画について紹介いただいた。
粉体シミュレーション利用技術分科会のコーディネータの東京大学の酒井幹夫氏には、「製造現場で コンピュータシミュレーションが果たす役割」と題して、リボンミキサー、ビーズミル、二軸混練機を 例に、DEM による複雑形状の攪拌翼を有する粉体挙動をシミュレーションする方法、DEM と MPS (Moving Particle Semi-implicit)をカップリングし、固液混相流をシミュレーションする方法などを紹
介いただいた。
広島大学大学院の石神徹氏には「膜分離プロセスにおける最新の粉体・流体シミュレーション技術」 と題して、粒子状物質を分離する精密ろ過膜における粉体シミュレーション手法およびイオンや低分子 の物質を分離する逆浸透膜における流体・物質輸送シミュレーションの手法、さらに、それぞれの適用 例について紹介いただいた。
㈱構造計画研究所の倉本龍氏、角家強志氏には、「粉体プロセスにおける商用ソフトウェアの活用事
例」と題して、㈱構造計画研究所で開発したソフトウェアの特徴と、そのソフトウェアを使用して、ス クリュー搬送、リボンミキサー、気流搬送のプラグ流、流動層、固気液三相流の混練プロセスへの適用 事例を紹介いただいた。
サイバネットシステム㈱の河野稔弘氏、石田智裕氏には、「粉粒体解析における汎用ソフトの有効的 な活用」と題して、DEM による混合工程、圧密工程、粉砕工程、搬送工程と、FEM(Finite Element Method)による焼結や粉体圧密への適用例を紹介いただいた。
三菱マテリアル㈱の王俊柱氏、髙山佳典氏には、「セメント製造プロセスへの DEMCFD の応用」と
題して、流動層仮焼炉の燃焼性と脱炭酸性能の向上を目的として行った DEMCFD 解析、その結果を 基に実機を改造した際の効果検証、また、さらなる性能向上に向けた検討について紹介いただいた。
出光興産㈱の坂倉圭氏には、「DEMMPS 連成による充塡層における気液粒子解析」と題して、石油
関連装置で使用される固定床反応器には、複雑な形状を有する触媒が充塡され、その内部の偏流やヒー トスポット形成が問題となっており、これを解決するために DEM-MPS 連成による流動解析モデルの 開発事例を紹介いただいた。
粉体シミュレーション技術が本特集によって粉体プロセス現場でますます利用される一助となること を期待したい。
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特集「粉体シミュレーション利用技術」を企画して
特集担当編集委員 加納 純也、伊ヶ崎 文和!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!